プルメリアと偽物花婿

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「すみません……」

 青ざめた顔の和泉は船の中でうなだれていた。

 シーウォーカーは今日最後のマリンスポーツだった。ちょうどすべての日程を終えた船は、あの後すぐに陸に戻り始めた。
 私たちは船の中の小さな部屋――医務室代わりらしい――に用意してもらい休憩させてもらっている。

 海底から船に上がった和泉をインストラクターやスタッフは心配してあれこれ訊ねていたけど、和泉は落ち着いた口調で問題ないと告げていた。問題ないと判断されたようで、この部屋に私たちを通してくれた。

 和泉の肩にバスタオルをかけて、ペットボトルの水を渡す。和泉の顔色はまだ悪いけど落ち着いている。

「体調大丈夫? 陸に戻ってもワイキキまでは少し時間がかかるからカフェとかで休憩していく?」
「いえ、本当に大丈夫です。体調が悪いわけじゃなくて……」

 和泉は言葉を切り、渡したペットボトルの水を飲む。

「今はとりあえず休憩して。気分悪かったら寝てもいいよ」
「先輩の膝にですか」
「…………」
「冗談ですよ」

 船は揺れるし木製の椅子は固いから本当に気分が悪いなら、と思ってしまったが……冗談だったようだ。
 ひとまず冗談を言えるくらいには回復しているらしい。
 本調子ではないようだからそっとしておこう。和泉も今は喋る気はなさそうだし。
 私は部屋から見える海を眺めることにした。

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