プルメリアと偽物花婿
「話をつける? どういうことですか?」
和泉がべりべりと田中さんと引きはがそうとすると、山田さんが割って入って田中さんを抱き寄せた。抱き寄せられた田中さんはニコニコした表情でやんわりと田中さんの腕から這い出る。
「なんだ君は! ミホに何をしようとした」
……あ、山田さんって怒ったらこんな顔をするんだ。想像していた顔とは違ったけど、怒った顔の答え合わせができた。
「ヨシくん、ごめんね。前から話してた私の運命の人は和泉くんなの。一度は諦めてヨシくんのもとに戻ったけど、やっぱり私、気持ちには嘘はつけない……! ヨシくんとは結婚できない!」
どうやら奇跡の四角関係がここに誕生してしまっているらしい。
笑っていいのか、シリアスな場面なのか。だけど少なくとも山田さんは目を見開き、赤いのか青いのかわからない顔色で、とにかく憤慨しているのは確かだ。
和泉は困惑しているが、多分同じ表情を私もしている。……田中さんだけは目をキラキラさせているけれど。
「どういうことだ、ミホ!」
山田さんは声を荒げると、田中さんの肩を強く掴んだ。きゃ、と田中さんが小さく声をあげると
「暴力はだめですよ」
和泉がやんわりと山田さんの手を引きはがす。
「……和泉くん」
「人の女を取って……ただで済むと思うなよ」
「それを言うなら、婚約破棄もただで済むと思わないで欲しいですけどね」
状況を見守っていた私を和泉は引き寄せた。
「俺の大切な凪紗先輩を傷つけたんですから。弁護士に相談して慰謝料の計算もしてきました」