愛の街〜内緒で双子を生んだのに、孤高の副社長に捕まりました〜

苦い思い出

一心不乱にパソコンへ向かうこと三十分。区切りのいいところで手を止めて、有紗はコキコキと首と肩を回した。

集中して作業をするのは得意だが、肩が痛くなるのは困りものだ。
 
背もたれに身を預けて、窓の外を眺める。ツインタワーに目を留めて、さっきの浜田との会話を思い出した。
 
龍之介とのランチミーティングに有紗が一度も参加していないことを、把握されていたのが驚きだった。

ランチミーティングは、そもそも龍之介のスケジュールが読めないためランダムで、誰がいつ参加したなど記録にも記憶にも残っていないはず。そう思って安心していたのだけど……。
 
さっき浜田が言った通り、ランチミーティングは仕事ではない。

だから参加しないことを今まで咎められたこともなかったし、この先もないだろう。
 
だからと言ってそれでいいのだろうか?
 
ここ海外事業部の業務は激務だ。乗り越えるためにはチームワークも必要で、はみ出すようなことはしない方がいいに決まっている。

できる範囲で参加する方がいいことはわかっていた。
 
——やっぱり、参加した方がいいのかな?
 
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