魅惑の絶対君主
お母さんに売られことや、数ヶ月後の自分の未来。
暗い気持ちになることも多いけど、今はこの日常が、たしかに幸せだと思えた。
──変わったことと言えば。
毎週土曜日のお昼に食事を届けてくれる料亭・鏑木の宅配員さんと仲良くなった。
と、いうのも。
料理の感想ついでに世間話をしているうちに、なんと同じ高校の先輩だと言うことが発覚したのである。
3年3組の鏑木先輩。
そう、鏑木──宅配員さんもとい、料亭・鏑木のひとり息子、鏑木先輩。
料亭を継ぐために修行中の身らしい。
同じ高校だと知ったとき、相楽さんとの関係をなんて説明しようかと焦ったけど、
勝手に妹だと認識されていたので、否定せずにそういうことにしておいた。
鏑木先輩曰く、『五百原商会(相楽さんのいる会社)には、昔から贔屓にしてもらっている』らしい。
明るい物言いだったから、裏の内情までは、どうやら知らないみたい。