魅惑の絶対君主


──わたしは商品。

商品に感情なんて必要ない。


そう言い聞かせながら、じっと続きを待っていた、のに。



「……でも、頑張るのは明日からでいいよ」



おもむろに伸びてきた手が、わたしの乱れた衣服を丁寧に直していくから、「え……?」と小さく戸惑いの声が漏れる。



それから、ふと影が落ちて、反射的に目を閉じた矢先。


唇に、微かな温もりを感じた。



「今日はこれで終わり」



ベッドの灯りが消える。

それから体にブランケットが掛けられて。



最後に、


「ゆっくり眠りな」


春のように柔らかな声が、わたしの鼓膜をやさしく撫でた。



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