「 悪 」
『今月、◯◯市で遺体となって発見されたーー……』
朝はアクビの連発で、涙目になりながら食パンをかじっていると、痛ましい事件がテレビから流れてきた。
「ここから遠い場所とはいえ、最近は物騒だな」
作業着にエプロン姿の伯父さんは、そう言いながら私の前に座り一緒に食パンを食べはじめた。
「物騒で思い出したが、伽耶乃。お前昨日部屋で何してたんだ?」
「えっ!?」
「内容は聞こえちゃいないが、話し声が一階まで聞こえてたぞ。
夜中まで電話はお肌に悪いし、あと子供が夜遅くまで起きるもんじゃない」
「うん、ごめんなさい。気をつけます……」
伯父さんに言われて、昨日のことを鮮明に思い出す。
やっぱり夢じゃなかったんだ……。
夢ならどんなによかったことか。
早くに両親を亡くした私青田伽耶乃は、父の兄である伯父さんに引き取られ、二人暮らしをしている。
なに不自由なく育てられた私にとって、伯父は第二の父であり一番尊敬できる人。
優しい伯父だから、いつか結婚するんだろうなって思ってたけど、ずっと独身貫いてるし、子育てだってしたことないのに私をここまで大きく育ててくれたんだ。
本当に頭があがらない。