もう誰にも恋なんてしないと誓った
 だけど、わたしはキャメロンよりも、お兄様がずっと好きだった。

 今では子供の頃より距離は出来たけれど。
 たまにお話してくださる度に。
 お姿を見かける度に……胸が苦しくなる程に。



 そんな気持ちを何年もグズグズ持ち続けて。
 わたしは貴族学院で仲良くなったシンシア・カーライルに、苦しい胸の内を明かした。


「オースティン・グローバー様……
 サザーランド侯爵家の有名な方ね。
 貴女の幼馴染みだとは知らなかった」
 


 オースティンお兄様は飛び級で学院を卒業されてから、帝国の大学に留学し、去年こちらに戻ってこられた秀才だ。
 その上、整ったお顔立ちなので、実物に会ったことはないけれどお名前だけ知っている人も多い。

 地方の伯爵家令嬢のシンシアでは、簡単には近付けないお兄様と子爵家のわたしが幼馴染みだなんて、驚いただろう。



「Aクラスのキャメロン・グローバーのお兄様なの」

「では、あの御方も貴女の幼馴染みなのね。
 普段、貴女達は親しそうな素振りもしていないから気付かなかったわ」

「あの御方って、キャムはそんな大層なヤツじゃないわよ?
 学院ではね、子爵家のわたしがあまり馴れ馴れしくしない方がいいだろうと思って。
 敢えて話しかけたりはしていないの。
 だけど、侯爵家には今でもよく遊びに行かせていただいているの。
 そこでは昔と変わらず、兄妹みたいに親しくしているの」



 帰国されてから領地でお仕事をされているお兄様とは、顔を合わす機会はなかなか無いけれど。
 キャメロンとは言葉通り相変わらず冗談を言い合って仲良くしてる。


 彼は他のご令嬢達の前では、憧れの侯爵令息のポーズを崩さないけれど、わたしにしか見せない本当の顔は少年の頃のままだ。
 そんな彼とは兄妹と言うより、姉弟かも。

 
 誰もが遠巻きにして見つめるだけしか出来ない、名家のグローバー兄弟と親しいことを、わたしはシンシアに自慢したかった。

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