幼なじみは狐の子。







 学校を休んだ恋が部屋で狐の姿に変身して休んでいると、リビングの方から窓を叩く音がした。

 音のした方に歩いていってみると宗介だった。リビングのガラス戸から、恋の方を見て開けろとジェスチャーする。

 恋がドアを開けるのを見ながら、宗介はリビングの壁にに寄りかかった。


「人に戻りな、恋。」


 靴を脱いで部屋に入ってきた宗介は、ソファに鞄を置くとすぐに中を開けた。

 がさごそと中身を探してから、ファイルをひとつ取り出すと、恋に手渡す。


「はい」


 恋が中を見ると、それは恋の失くした箒の交換表だった。


「わあ」


 目を輝かせた恋に、宗介はふんと鼻を鳴らした。



「ありがとう。どこにあったの?」

「どこにあったの、じゃない。」



 宗介が口を開いた。



「ボケっとしてるからそういう事になるんだよ。不注意。お前は。いつもいつも。進歩しないんだから。」

「でも本当にどこにあったの?」

「先生に謝って貰ったの。大事なのはそこじゃない。これから同じミスをしないように気を付けなきゃだろ。まったくもう、馬鹿なんだから。」

「へえ」



 しかめっ面でいつもの様に説教する宗介。

 今朝玄関で宗介が自分を抱きしめて優しく慰めようとした事なんかもう忘れてしまった恋は、安心しきった満面の笑顔で、ファイルにチュっとキスをした。



 
 






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