幼なじみは狐の子。
2野外体験実習



「今年の宿泊学習は野外体験教室です。」


 教卓を背にした担任の小山田先生は、教室の黒板に白いチョークで大きく野外実習と書いた。


「生徒たちにとって、野外体験教室は6年生最大の楽しみです。1人1人責任を持って、普段では経験できない活動をして、思い出に残る一日を作りましょう。」


 恋は、窓際の後ろの席で先生の話を聞いていた。

 6年生のキャンプは毎年恒例で、梅雨明けと同時に始まる。

 恋も生徒たちも、教室を楽しみにしていた。




「恋、バス、隣に座らない?。」


 グループ決めで席を立ってやって来た理央が恋の背中を軽く叩いた。 



「良いよ。でも明日香は?」

「芽衣と座るって。上野くんは多紀と座るって。」

「楽しみ。バスもキャンプも。」

「ね。みんなで泊まりに行くなんて滅多にないもん。」



 班ごとに合わせた机で、配られたしおりに目を通しながら理央が言った。



「何持ってこうかなあ、キャンプ。」

「キャンプグッズは全部準備されてるって。泊まりもロッジだし。可愛いロッジだと良いね。」

「去年の6年生が言うには、結構大きいロッジだったみたい。グループごとに別棟の。こう、丸太で組んであるみたいな。恋、分かる?」

「分かる、気がする」



 わくわくしながら恋が言うと、班の行動表をチェックしていた宗介が言った。



「僕はテントで寝た事あるけど、恋は外で泊まった事ないだろ。山の中は涼しいけど、結構危ないから、気をつけないと。」

「野生の動物居るかな。」

「リスとかなら居るみたいだよ。時々だけど。見れると良いね。」

「俺、去年の夏同じとこ行ってきたんだ。ロッジは違うけど。面白かったぜ。」



 西井多紀(にしいたき)が言うと、明日香がうっとりとため息をつく。



「いいなあ。私も恋と同じで、外に泊まった事ないんだ。夏はやっぱキャンプだよねえ」

「それでやっぱカレーだよな。外で食べる。」

「テントも良いけどロッジも良いよね。夜ずっと起きてようよ。よし、私カメラ持っていこう。」



 先生の指示で席に戻るまで、クラス中ががやがやとキャンプの話で盛り上がっていた。



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