幼なじみは狐の子。
夜になって、ロッジのウッドデッキの手摺に凭れた恋は、星空を見上げていた。
「あ、恋。外に居たんだ。」
ドアを開けてパジャマ姿の理央が出て来て後ろから声を掛けた。
「恋すぐどっかに行っちゃうんだもん。昼食の時も居なくなったでしょ。」
今日の昼過ぎ、木から降ろされた恋は、宗介の顔の前に、首を摘んでぶらんと吊り下げられた。
宗介はわざと笑顔を作ると言った。
「人に戻りな?。恋。」
結末は分かっていたが、仕方ないので、恋はその場で白い煙をあげて、人の姿に戻った。
ゴチン!
間髪おかず、宗介はグーで人に戻った恋の頭を打った。
宗介は腕組みをして、目を釣り上げて怒った。
「狐になるなって何度も言った!よくも逃げたね。いつもいつもそうやって勝手な事して心配させて。あげく木から落ちて怪我しそうになってる。怒られないと思ってんのかよ。いい加減にしないともう一発食うからね!」
……。
「もう夏だけどまだ涼しいね、恋。山ん中だからかな」
理央が言った。
紺色の空には小さな星々が散りばめられて、キラキラと瞬いている。
と、またドアが開いて、今度は明日香が顔を出した。
「あ、恋、理央、居た居た。」
「明日香」
「どうしたの?」
「ロッジのみんなで集って、肝試しやろうだって」
明日香が言った。
「今道順と脅かし役を決めてる。恋達もやろうよ。」