幼なじみは狐の子。
ロッジの外はお誂え向きに暗くなってきていた。
木々の葉は黒く、風が吹くと、ざわざわと不気味な音がする。
じゃんけんで勝って、恋は脅かし役に決まっていた。
「恋、1人で大丈夫?。待ってるの怖くない?」
「大丈夫」
「すぐ誰か行くと思うよ。本式に脅かすと面白いかも。がんばってね。」
恋達脅かし役は理央たちと分かれて、数名で道順に離れて散らばった。
ところで脅かし役、と聞いて、恋は自分があやかしであることを思いついていた。
誰かを脅かす、というのは、恋にとっては心踊るわくわくする事だった。
恋は、体からはあやかしの印の光を出し、てのひらにはあやかしの火の玉を持つことに決めた。
これでバッチリ、やって来た人は驚いてくれるだろう。
草陰に隠れて、恋は脅かされ役が歩いてくるのをドキドキしながら待った。
恋の期待とは裏腹に、一番最初の脅かされ役は宗介だった。
宗介は肝試しに参加したくなかった。
持ってきた本を読んでいたかったし、面倒だから早く休みたかったのだが、恋が来ていると言われて心配でついてきたのだ。
クラスメート達に送り出されて、懐中電灯を手に、宗介は森の隣の小道を進んで来た。
辺りは静かで、微かに虫の声がする。
人の気配に気が付いた恋はあやかしの光を出しながらひょこひょこと草陰から進み出た。
「あ」
あやかしの光を出していたし、手には火の玉のような物を持っていたが、宗介にはそれが恋だとすぐ分かった。
数秒間、宗介は恋を見ていた。
「お・ま・え・は!」
くわ、と怖い顔をした宗介に、背中を見せて逃げ出そうとした恋。
散々叱られた恋は次の日はついに狐にはならなかった。