幼なじみは狐の子。



 チャイムが鳴って、帰りのホームルームが終わった。

 パラパラと生徒たちが教室を出ていく。


 恋が鞄を背負うのを、宗介は机に腰掛けて待っていた。


 階段を降りた昇降口で、宗介は片手で下駄箱に凭れながら、恋がしゃがんで靴を履くのを見ていた。


「恋」


 宗介が呼んだ。



「何?」

「今年の星祭り、一緒に行かない?」



 靴を履きながら恋が顔をあげると、宗介はちょっとだけ首を傾げた。

 下から見ると、さらさらの黒い髪が斜めに下へ流れて、宗介はいつもよりいっそう端正に見える。


「良いよ。行く」


 恋は靴紐を結んでいる最中だった。

 恋が聞いた。



「理央たちもう誘った?」 

「いや?」



 宗介はちょっと真面目な顔をして、声を低くした。



「違うよ。2人きりで行こうって行ってる。」

「何で?」



 びっくりして素っ頓狂な声を上げた恋に、宗介は顔色を変えない。



「別に。」



 そっけなくそう言われて恋は戸惑った。



「何で?」

「なんでもいいだろ。約束。他の誰かを誘うなよ。」

「でも……」

「なあに?」



 宗介は機嫌は良さそうだったが、いつもと同じ恋を叱る時の声音を出した。



「僕とじゃ不満なの?。」

「ちが……」

「じゃあ決定。この話は終わり。僕楽しみにしてるからね。」




 歩き出した宗介は、話題を変えて、恋が分からないと言っていた算数の授業の説明を始めた。



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