幼なじみは狐の子。



 2時間目の国語の授業は作文だった。

 将来について書くのが課題で、宗介は会社員、恋は散々迷った挙げ句お菓子屋さんになる事について書いた。




 キンコーンとチャイムが鳴って20分休みが始まる。

 恋は理央と連れ立って、廊下に出て2組の教室へ向かった。

 ガラガラと2組の教室の戸を開けると、西木洋太(にしきようた)は、教室の隅に座って、本を読んでいた。

 黒沢さんもほとんどの女子たちも居なくて、教室はがらんとしていた。



「西木くん」

「あ、新田、駒井」



 近づいていくと西木くんは本を閉じて顔をあげた。



「黒沢さんのお相手、お疲れ様。恋人解消した方が良かったよ。大変だったね」

「うーん」



 西木くんは苦笑いした。



「酷いよね。ああやって泣いておいて、コロっと態度変えるなんて。その後の事とか考えてくれないんだ。」

「酷いっていうか、考えてる事が分かんなくて。」

「気にしちゃだめだよ。忘れちゃいな。」

「いや、一回好きって言ってこられると忘れられない。ちょっと言うと、迷惑」



 西木くんは遠い目をした。



「忘れられたくないとかそういう事を言いたがる奴だったし、忘れない方が良いんだろうな」

「優しすぎるよ、そんなの」

「まあいいや。俺が流せば良いんだし。恋愛ごっこが好きな奴ってだけなんだろ。嫌だけどさ。」

「嫌どころじゃないよ。大迷惑だよ。」



 西木くんは理央を手で制したが、ふっとため息を付いて言った。

「俺は最初から別に好きじゃないから良いけど、家族に言っちゃったからなあ。姉貴が超がっかりする。面倒くさいことしないで欲しかったよな……。」



 恋は心から同情して、コクンと頷いた。





 掃除の時間、恋と理央は、教室の片付けをしながら、学校に出没する子狐の話をしていた。

 机を運び終わって、箒をロッカーに片付けて居ると、外の掃除の班だった宗介が教室に入ってきた。


 宗介は黒板を下げていた恋に気付くと、後ろから声を掛けた。


「居た居た、恋、」


 しかし丁度チャイムが鳴ったので、恋と宗介は話せずじまいだった。





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