幼なじみは狐の子。
4転校生が来て
ある日のこと。
学校の帰り、公園に寄った恋は、花壇で花を見ていた。
色とりどり、形も様々な花の向こうには、ぶらんこと滑り台が見える。
恋は、咲いている花の匂いを嗅いでいるうち、狐の姿で花壇を歩きたくなったので、辺りを確認してから、どろん!と子狐に変身した。
しばらく経って、花に飽きた恋は、花壇の隅の方まで行って、そこで人の姿に戻ることにした。
どろん!と変身して、白い煙があがった後は、そこに居るのは1人の少女。
恋が汚れてしまった服をパタパタと叩いていると、突然、後ろから声がした。
「ねえ」
振り向くと、淡い色の髪の綺麗な男の子が、さっきまで無人だった向かい側のベンチに座っていた。
男の子はちょっと首を傾げた。
「キミ、あやかし狐でしょう。」
恋は、他人からそれを言い当てられたのは初めてだった。
何より変身するところを見つかってしまったので恋はショックで動けなかった。
恋は服の裾を掴み、男の子をこわごわ見返した。
「逃げないでね。」
男の子が言った。
男の子は足を組んで、頭からつま先まで、ふーん、と恋の姿に目をやった。
「外で変身したら見つかるよ。駄目だよ、やったら。」
男の子は落ち着いた口調で諭した。
「まだ子狐だね。居たのが僕で良かった。……どうして何も喋らないの?」
聞きながら男の子がベンチから立ち上がって恋の方へ歩いてきたので、恋は焦って、咄嗟に、どろん!と狐の姿に変身した。
「あ、待って。」
男の子は何か言おうとしたが、もくもくと上がる白い煙を置いて、恋は猛スピードでその場から走り去った。