幼なじみは狐の子。
学校から家に帰った恋は、宗介の家へ向かった。
チャイムを鳴らすと宗介はサンダルをつっかけて出て来て、恋をリビングに招き入れた。
お茶を淹れている宗介の傍らで、恋は今日あった事を話した。
「お前が樋口と話してる時、僕は廊下に居た。」
宗介が言った。
「図書委員の連絡で五年生が来てたんだ。それでお前達は何を話してたの?」
「別に。何にも。」
「樋口は緑化委員だから、水やりはあいつの仕事だけど、たまにしかやってないだろ。手伝う事ないぞ、恋。あいつの役目なんだから。」
宗介はコップに淹れたお茶を口元に持って行った。
「女子達が樋口の事を話す時、王子様みたいに言うけど、顔があれっていうだけで僕にはそんな風に見えない。」
「優しいよ、樋口くん。親切だから人気があるんだよ。」
「クラスの女子達が、僕と樋口を並べて容姿の事で喜んでてイライラする。和と洋だって。どういう神経してんだか。恋、お前は。」
宗介は言葉を切って恋を睨んだ。
「妙な事言い出さない様に。頭来る。」
「褒めてるんだよ、それ」
「嬉しくない。セットにされてるのが超嫌だ。別々でなら前からなんか言われてたけど。あーあ。」
宗介はコップを置くとソファに寄りかかった。
「そういや、発表会、いつだっけ?」
お茶を飲みながら、ふと恋が尋ねた。
「誰の?」
「樋口くんの。ピアノの。」
「知らないよ、僕は。知るわけないだろ。樋口、あいつ、お前の事呼んだの?」
「うん、みんなで来なよって招待してくれてるよ。宗介も呼ばれたのかと思ってた。」
「あいつが?僕を?。お前本っ当に何も分かってないんだね!」
分かってない、とは、それはどういう意味なのかを恋が聞こうとした時、宗介の家のチャイムが鳴った。