噛んで、DESIRE

夢の国が似合わない







「同じ家に住んでるんだし、いっしょに行こ」



吾妻くんには危機感が足りない。

これは彼と同居してみて、毎日のように身に染みて感じていることだ。


今日もまた、吾妻くんは朝から通常運転。

危機感のカケラもない発言に、小さくため息をつきながら反論した。


「……クラスの人に怪しまれたらどうするんですか」

「そんときはそんとき。誤魔化しなんてどうとでもなるじゃん」

「その考えがいけないんです!」



いまは、遠足もとい校外学習の日の朝。

いまからテーマパークへと向かうわたしたちは、クラスメイトというより同居人というほうが強い。


わたしが急いで支度をしていると、吾妻くんは暇そうに声をかけてくる。


「たまたま駅で会ったって言えばいいだけじゃん?」


< 143 / 320 >

この作品をシェア

pagetop