噛んで、DESIRE

ダークヒーロー







「……お父様、お母様。ただいま帰りました」



宿題やら遊びやらであっという間に夏休みが過ぎていき、ついに最終日になった。

実家に着くなりお手伝いさんに着せられた着物は、かなり久しぶりで窮屈に感じる。

ただでさえ和を基調とした実家は、お花の匂いに囲まれているというものの、息苦しい。


父と母が待つ部屋に入って正座でお辞儀をすると、父が低い声を放った。


「1ヶ月、……いや2ヶ月ぶりか」

「……その節は、申し訳ございませんでした」

「もういい。今日はそんなことのためにおまえを呼んだわけではない」


厳格な顔をした父は、いつに増しても無表情だった。

隣に座っている母も、長女が帰ってきたといえど挨拶のひとつしない。


自分が下手なことをして父の機嫌が悪くなるのが怖いのだろう。

そういうところは臆病で、わたしと同じだと思った。



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