リアルに恋していいですか 〜10年ぶりに再会した超国民的スターに執着されています〜
〇遊園地(暗くなり始めるころ)
敷地内を歩きながら、険しい顔をする菜穂子。
菜穂子(なぜに遊園地……)
人が行き交うのを見て、額に汗を滲ませる。マスクと帽子、サングラスで変装しているものの、国民的アイドル一ノ瀬千晶だと気付かれたら大騒ぎになる。
菜穂子「休日に女連れで遊園地なんて、無用心すぎでは?」
千晶「ここまで変装してたら誰も気づかないから。それにもう日が暮れるし」
菜穂子「そう……? あ、あれ乗りたい」
千晶「あれは……」
ぐるぐる回転するタイプの乗り物に乗るふたり。
向かい合って座り、乗り物が激しく動き始めると、千晶の顔が曇り出す。
千晶「これ、俺やばいかも」
菜穂子「なんて? きゃーっ! 何これ楽しい……!」
千晶「うっ……」
乗り物を降りたあと、真っ青になってよろめく千晶。
千晶「疲れた……」
菜穂子「ねえ千晶、今度はあれに乗りましょう」
菜穂子が指差したのは、また激しそうなジェットコースター。
千晶「えっ、あれ!? ほら、メリーゴーランドとかコーヒーカップとか他にも色々……」
菜穂子「今列空いてるわよ? あれ、もしかして絶叫苦手だった?」
千晶「ま、まぁ余裕だけど。よし乗るか」
ジェットコースターに乗るふたり。菜穂子は両手を上げて楽しそうにしているが、千晶は死にそうな顔をして耐えてる。
千晶「ひっ……うわあああっ。マジ無理、俺これ無理だわ」(声が震えてる)
菜穂子「だからなんて? 聞こえない! きゃーーっ最高!」
降りたあとゲッソリしている千晶。
その後は、メリーゴーランドやゴーカートなど、身体に負担がかからないアトラクションを堪能するふたり。気がつくと、ふたりとも楽しくなって満面の笑顔になっていた。
するとおもむろに、千晶が手を繋いでくる。振りほどかなくてはいけないのに、そうできない菜穂子。
(友達は……手なんて繋がないのに)
飲み物を片手に敷地を歩く菜穂子。
千晶「あ〜久々にこんな笑った」
菜穂子「ほんと、すごい楽しかった。次くらいが最後かしら。何か乗りたいものはある?」
千晶「……絶叫以外で」
菜穂子「やっぱり苦手なんじゃない」
千晶は観覧車を指さして言った。
千晶「じゃあ――あれ」
〇観覧車の中(夜)
窓の外を眺めると、夜の都会の景色が一望できた。
菜穂子「どうして急に遊園地?」
千晶「デートっぽいことがしたくて」
菜穂子「……これはデートじゃ、」
千晶「俺はデートだと思ってるけど」
彼はずいと顔を近づけてくる。
千晶「恋愛感情があって出かけたら、それはデートでしょ」
菜穂子「私たちは友達でしょう」
千晶「俺は菜穂子が好きだよ。菜穂子さ……俺のこと本当に好きじゃない?」
菜穂子「……!」
菜穂子の顔がかあっと赤くなる。その頬に手を添える千晶。
千晶「そうやって俺の言葉にすぐ赤くなったり、俺のためにお菓子作ってくれたり……手を繋いでも拒まなかったりさ。それって、一般的に好きってことじゃないの?」
千晶「俺はお前に触れたいし、友達のままでいたくない」
千晶は熱を帯びた表情を浮かべ、で赤くなった菜穂子の頬を撫でる。
菜穂子は目を伏せる。
菜穂子(拒まなくちゃいけないのに、そんな顔されたら……)
菜穂子(千晶のことが好き。でも、千晶は普通の相手じゃない)
菜穂子は恋心を心の奥にしまい込む。
菜穂子「千晶はアイドルでしょ」
千晶「じゃあ、俺がもうアイドルじゃなくなるって……言ったら?」
菜穂子「…………は?」
突拍子もない言葉に、菜穂子は目を瞬かせた。
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こちらはコンテスト応募作品のため、一旦ここでひと区切りとさせていただきます。ありがとうございました。


