星川学園にようこそ!

入学式 3

 入学式が終わって、私たちは教室にもどる。朝のホームルームと違って、保護者たちも教室にいた。
 もちろん、私のお母さんも教室にいる。でも、ほかの子の親は白っぽい礼服なのに、私のお母さんだけ黒のスーツを着ていた。入学式というより、仕事に行くときの服装だ。
 それもそう。
 お母さんは仕事を午前中だけ休んで、お昼から職場に行くことになっているから。
 入学式に来てくれないよりはましだけど、あれだと浮いている。
「では、今日はこれまでです。学校を見てまわったり、親子でお話ししたり、思い思いにすごしてください」
 田中先生がホームルームを切り上げて、教室の中がのびのびした空気になる。
 私はお母さんのところに向かった。
「入学、おめでとう」
 お母さんは、ほかの保護者たちと同じように笑ってくれる。
「ありがと。それより、写真とりに行こうよ。すぐ仕事でしょ」
 入学式は午前で終わりだし、この後は何もすることはないし、のんびりしたい。でもお母さんに仕事があるんだから、しょうがない。
 お母さんといっしょの写真を残せるだけでじゅうぶんだ。
「そうね、校舎の表玄関がいいかしら。校門のところでもいいけど」
「ふたつの校舎の間に桜の木があるでしょ。そこもいいな」
「桜ね、入学式らしくていいわ」
「でしょ。それで、りっかちゃんにも見せてあげるんだ」
「律歌とお父さんにも、でしょ」
「そうだった、えへへ」
 私は、ほだかくんのほうに目を向けた。
 ほだかくんも、お母さんと話していた。ほだかくんやあいちゃんとそっくりな、栗色の髪と瞳をしている。
 ひょっとしたらと思っていたけど、美人さんだ。
「音美、どうしたの? 行かないの?」
 私のお母さんに言われて、はっとした。
「ごめんごめん、行く」
< 10 / 13 >

この作品をシェア

pagetop