星川学園にようこそ!

入学式 5

「あら、あなたはC組にいた……」
「鈴森ほだかです」
「七川めぐみです。ええっと、初めまして、よね。初等部の卒業式では見かけなかったけど」
「鈴森くん、引っこしてきたばっかりなんだよ」
 私が教えてあげる。
「七川さんには、通学路でまよっていたところを案内してもらったんです。学校のことも教えてもらいましたし」
 ほだかくん、おとなにものおじしないのかな。初対面の私のお母さんに、こんなに堂々と話せるなんて。
「朝にそんなことが。えらいわね。困っている子を助けるなんて」
 お母さんにもほめられた。えへへ。
 でも私は、ほだかくんがひとりなのが気になった。
「親はどうしたの? お母さんといっしょじゃないの?」
「母さんなら、先に初等部の校舎に行ったよ。あいを迎えに。ちょうど見かけたから、朝のお礼をって思ったんだけど」
「わかった。じゃあ、お願いするわ。画面の下の丸いボタンを押したらとれるから」
 お母さんはそう言って、ほだかくんにスマートフォンを手渡した。
「このボタンですね」
 私とお母さんは、となり同士で桜の木の下に立った。肩がふれあうくらいに近い。
「じゃあ、とりますよ」
 カシャ、という音が、桜の木の下でひびく。
 ほだかくんにとってもらった写真なら、きっといい思い出になるよね。
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