御曹司は高嶺の花に愛を刻む
ふとハンカチを見れば、名前が刺繍されている。

"NAYU.H"

「菜由」

思わず口に出す。
綺麗な彼女にぴったりな響きの名だな。
似合ってる。


「綺麗だな」

俺はわざと、どっちに言ってるのかわからない様に言う。

クククッ
さすがに動揺してるな。

そんなに大事なハンカチだったのか?

「受け取らないから、いらないのかと思った」

彼女は、ただ黙って俺を見ている。
何を考えている?
俺の何を見破ろうとしている?
そんなに、唇を噛んで。

何だか見ていられず
「そんなに、唇かんだら血が出る」

そう言って、ふっくらとした艶のある唇に触れた。
本当は、どうせ噛むなら俺が噛みつきたい。

俺が怖いのか?
怖がらせたいわけじゃないのに。

「俺が、怖いか?」

彼女は横に首を振った。

仕草がいちいちかわいいな。

「そうか」
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