運命とか勘弁してほしい!
香奈が怒りに顔を歪ませ、大声で怒鳴り付ける。これはまずい。逃げなくちゃ!……でも、体に力が入らない。

香奈が何かを叫びながら、スコップを振り上げる。スコップに付着したあたしの血があちこちに飛び散った。逃げることのできないあたしにできることは、ただ目を閉じて振り下ろされた時の衝撃に耐える覚悟を決めることしかない。

「ッ!」

強く閉じた瞼の裏側に、これまでの走馬灯が見えた気がした。

もう会えないと思った両親にもう一度会えたこと、この世界がオメガバースの世界だったこと、腫れ物のように扱われたこと、栞くんたちに脅されたこと、ミステリー研究会での活動ーーー。

「琴葉!!」

栞くん、彰くん、草太くんの叫び声が聞こえた。頰を涙が何故か伝っていく。しばらくすると揉み合うような声が聞こえてきた。

「な、何よあなたたち!私には見向きもしなかったくせに!私はオメガよ!?特別な存在なのよ!?」

「だから何?」

「そんな理由で琴葉にこんなことを?」

「後悔させてやる!」

そんな声を聞きながら、あたしの意識は途切れた。
< 31 / 35 >

この作品をシェア

pagetop