気高き敏腕CEOは薄幸秘書を滾る熱情で愛妻にする
 常連同士という仲間意識からか思いの他会話が弾み、必死のアプローチが功を奏したのか、彼女と一夜を過ごすことが出来た訳だが……。
(まさか一晩限りの関係と認識しているとは思わなかった)
 咲良としては、颯斗が体を重ねた女性を冷たく置き去りにする男と認識しているから、仕方がないのだけれど。
「他の候補も捜したら? 残念だけど彼女は難しいと思うよ」
「言い切るなよ」
 朔朗の遠慮のない言葉に、颯斗は眉間にシワを寄せる。
「契約結婚とはいえ迷わず断られたんだろ? 颯斗の容姿にも肩書にも靡かないんだから、もう相手がいるんだよ。それくらい真面目で誘惑に揺るがない固い女性の方が結婚相手にはいいんだろうけど、ゆっくり口説く時間はないからね」
 朔朗は、颯斗と咲良が既に体の関係を持ったことまでは知らない。バーで意気投合して颯斗が一目惚れをした認識だ。だから実際以上に見込みがないと判断している。
 しかしあの夜咲良は間違いなく颯斗を求めてくれた。酔った勢いかもしれないが、セックスが出来れば誰でもいい、なんて考えの女性ではないと断言出来る。
 そうなると考えられるのは、やはり颯斗の態度に失望したから。
(住む世界が違うとも言っていたな)
 実際はそんなことはないのに。
 しかし信じて貰えないのは、全て自分の態度が原因だから仕方がない。
「結婚相手は彼女だ。うちの会社に誘ったから、今はその返事を待つ」
「そこまでするわけ?」
 呆れたような朔朗の言葉は聞き流す。
 もし咲良と出会っていなかったら、他の結婚相手を探したのかもしれない。
 しかし今となっては、彼女以外考えられない。
 わずらわしさから逃れたくて結婚相手を探していたはずが、咲良を手放したくなくて結婚したいと目的が変わっていた。

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