気高き敏腕CEOは薄幸秘書を滾る熱情で愛妻にする
 契約結婚を申し込まれたせいか、以前よりも意識してしまっている。
 もし彼が条件などなしにプロポーズしてくれていたらよかったのにと、考えずにはいられない。
 そんな中、就職活動は困難を極めていた。
 なんとか最終選考まで漕ぎつけた企業が有っても、リファレンスチェックの段階で選考から漏れてしまう。
 前職の実績を調べる企業があるとは知っていたけれど、ここまで影響が出るとは思わなかった。
 でも考えてみたら、情報漏洩の疑いをかけられて退職している人間を雇いたい企業なんてあるはずがない。上司の個人情報も扱う秘書なら尚更だ。冤罪だとしても、疑惑という時点で敬遠されるのだ
 それならばリファレンスチェックがない仕事を捜そうかとも考えたが、咲良はやはり秘書の仕事を続けたかった。
 キャリアを積みたいというのもあるし、元々自分が前に出るよりも、フォロー役が好きだった。自分のフォローが役に立ったときの喜びをやりがいに感じていたのだ。
 捨てきれない颯斗への想いと、仕事が見つからないという現実。
 時間が経つに連れて、咲良は追い詰められていった。
 その過程で、せっかくの仕事のチャンスを蹴るのは勿体ないのではと考えるように変化した。
 今の咲良にとってこれ以上良い条件の転職機会はきっと無いだろ。
 渡会ワークスについて情報収取すればするほど、上昇気流に乗った勢いのあるオフィスで働いてみたい気持が日々大きくなっていった。
 契約結婚についても、自分が思い描いていた結婚と違っているだけで、そう悪いものでもないかもしれない。
 彼を好きだと思う気持ちは確かなのだ。
 片思いでも好きな相手の側にいられるのは幸せなことではないだろうか。
 幸い彼は、契約結婚の妻を尊重すると言っていた。
 きっと自分と同じだけの愛情を求めなければ、上手く行く。
 好きな仕事と、颯斗の妻という安定した立場。
 仕事が見つからず、経済的な不安に怯える今よりもずっといい。
 打算的だっていいではないか。だって元々契約結婚なのだから。
 颯斗に契約結婚について前向きに考えると伝えると、彼は咲良が想像していたよりも喜んでくれて、早速中途採用の内定説明会について知らせてくれた。
 CEOの伝手で入社とはいえ、他の中途社員の人と同じような手続きを踏むとのこと。咲良もその方が後ろめたさがなく入社出来るので安心した。
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