拾われデザイナーと魅惑のランジェリー 〜副社長は名ばかり婚約者を溺愛中〜
布を取り出し、裁断してゆく。縫い代に印をつけ、ミシンにセットする。ダダダっと縫い上げて、過去の資料を見比べる。
そんな作業をしていると、不意にアトリエの扉が開いた。

「琶月」

ドキリと胸が鳴った。振り向けば、困ったように眉をハの字にする崇臣さんがいた。

「『睡眠も食事もきちんと取ること』って、さっき伝えたでしょ。何でミシンの前に座ってるのさ」
「あの、これは……」

言い訳を考えるも、言い訳は言い訳でしかない。しかも、あなたのことを考えていて眠れませんだなんて、本人に言えるわけもない。

口ごもっていると、崇臣さんはこちらにやってきて、私の右腕をつかんだ。

「とにかく、今日の作業はもうおしまい。ほら、おいで」

腕を引かれ、彼の寝室へ入ってしまった。
私の寝室より2倍はあるその部屋には、これまた私のものより2倍はあるだろうベッドが置かれていた。他にもいろいろ置いてあったけれど、周りをきょろきょろ見回す間もなく崇臣さんにベッドに誘われた。

「た、崇臣さん!」
「守れないなら、一緒に寝るって言ったでしょ」
「で、でも……」

ドキドキと、胸が破裂しそうなほど高鳴っている。

「大丈夫、何もしないから。ただ寝るだけ」

そう言うと、崇臣さんは私をそっとベッドに押し倒す。そのまま自分も隣に寝転ぶと、私が逃げぬようになのか、優しく抱きしめられてしまった。

「おやすみ」

崇臣さんはそう言って、目を閉じてしまう。
けれど、目の前に端正なお顔、そして頭の下には崇臣さんの筋肉質な腕。こんなの、眠れるわけないよ!
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