恋の病に、堕ちてゆく。
水色のイルカはまだそこにいた。

私が持ち帰ったら方がいいのかな?
このまま置き去りは可哀想だ。

できれば青波に持っていてもらいたいって思ってしまう。


「あの、このイルカなんですけど…」

「あ、持って行く?」

「此処に置いて行ったら、可哀想ですもんね」

「置き去りにされてたら、俺が持って帰るよ」

「え?」

「加奈ちゃんを送った後、俺たちはまた此処に戻ってきてパソコンとか片付けるからさ。その時に」

なんだ、わざと置いていたわけではないんだ。ちゃんと持って帰ってくれるつもりだったんだ。


「良かった。青波さんにあげたものなので…」

「そうだね。有り難くもらっとく」

「青波さんに買ってもらったものですけどね…」

「確かに」

2人で笑い合う。

2人きりで話せた、最後の時間だった。
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