恋の病に、堕ちてゆく。
第2章
先生は昨日と同じように薬を塗って包帯を巻いてくれた。


「昨日よりクマもないし顔色はいいけど、表情は暗いわね」

「……警察が来て、タンスに閉じ込められていたので」

「それで手を握って、青波に慰めてもらってたんだ?」


聴診器をあてられながら聞かれると、胸の鼓動が答えになってしまいそうだ。

あの時、青波はなにを言おうとしていたのだろう。


「青波を好きになった?」

「はい?」

「優しい奴だから、好きになったんじゃない?」

「誘拐犯を、好きになる?おかしいです」


映画はフィクション、これは辛い現実だ。
愛だの言っている間に、殺されてしまう。
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