ひとつのおむすびがきっかけで、凄腕救急医に溺愛されることになりました
「ありがとうございます」とお礼を言ってから、パック詰めされた出来立ての赤飯を受け取った。

赤飯を袋に入れてから自分のロッカーにしまい、再び厨房へと戻る。


「今日、仕事終わったら行くんでしょ?」
「はい。そのつもりです」

「少し早く帰りな? 今日は、お店のことはいいから」

「えっ、そんな! そこまでしていただかなくても……」


「大丈夫、気にしなくていいから」と、樹さんにも言われてしまう。

そうはいっても、今日は私にとっても大切で忘れられない日。
2人の厚意をありがたく受け取って、早めに帰らせてもらうことに決めた。


――4月21日。
今日は、私にとって特別な日。


4年前……私が22歳の頃。私は、当時付き合っていた氏と同棲中だった。その頃はまだ一流ホテルの厨房で勤務していて、毎日が激務。

そんな中でも彼との同棲生活は最高に幸せだったし、きっと結婚するんだろうな……と、彼との結婚生活を漠然と思い描いていたこともあった。

そんな中、私の妊娠が発覚。
そのときに、藍木総合病院の産婦人科を受診した。

妊娠5週目に入っていて、エコー写真を手にしたときは嬉しくて涙が溢れた。

きっと、彼も喜んでくれる――。
そう思いながら、夕食の時間に彼に妊娠を打ち明けた。
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