ひとつのおむすびがきっかけで、凄腕救急医に溺愛されることになりました

行かなければいけない場所

あのストーカー騒動から2週間が過ぎた。
徐々に5月に近付きつつあり、暖かい日が続くようになった。

お店の方も一段と忙しくなって、学生のバイトでも雇おうかという話になっている。


私はあのストーカー騒動のあと、蒔田先生に言われた通りに近くの整形外科を受診した。
レントゲン撮影をしてもらって、骨折はないという診断。

湿布薬を処方してもらい、左足に負荷がかからない程度に仕事も可能とのことだった。

そして蒔田先生も、あの日以来お店には来ていない。
『連絡してもいい』『お店にも行く』と言っていたけれど、きっとその場のノリで言ったことなんだろう。

正直言うと、受診の結果を伝えようと何度もメッセージアプリを開いた。

でも、相手は優秀なドクター。
〝迷惑かも〟という思いが先走り、結局メッセージは送らなかった。

私のことなんて、もう忘れているかもしれない。


「おーい陽菜ちゃん、ちょっと来て」


考え事をしながら開店前の店内の清掃をしていると、厨房から美菜子さんの声が聞こえた。

「はい」と返事をして厨房に入ると、店長の(たつき)さんが小さなパックを差し出す。


「あ……これってもしかして」
「そう、お赤飯。今日は、陽菜ちゃんにとって忘れられない日だからね」
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