岩泉誠太郎の結婚
 事務用の小さいハサミだったとはいえ、激しく振り回されたそれで数人の怪我人が出た。かすり傷とはいっても立派な傷害罪。最初に彼女と接触した俺に至っては縫うほどの傷だったため容赦なく告訴するつもりでいたが、彼女を金輪際俺と椿に関わらせないことを条件に示談を成立させた。

 警察沙汰になったのは誤算でしかないが、その結果は想定以上のものだった。

 俺達の関係を公のものとした上で椿を攻撃しようと考える輩を威嚇。尚且最大の不安要素であった澤田やよいの封じ込めに成功したのだ。

 これまで飛び交っていた椿の不名誉な噂もこれで一掃されたことだろう。

 全てが解決してしまえば、残ったのは椿との婚約だけとなった。

 今回の件で彼女の気持ちに変化があったのは間違いない。正直、俺的にはこれが最も嬉しい誤算だった。

 全てが落ち着いた時に彼女の気が変わったら困ると思った俺は、プロポーズをしたその日から精力的に結婚の準備を進めていた。

 会場の手配に半年はかかると思っていたが運良く空きが見つかって、3ヶ月後には挙式と披露宴をする予定だ。

 問題が解決したことで椿は職場に復帰を果たしたが、結婚式が終わればいつ子供ができてもいいはずだ‥‥もちろん相談して決めるべきことだとは思うが、俺としてはすぐにでも‥‥いや、彼女の意見は絶対だ。先走ってはいけない。また最初のプロポーズの時のように逃げられたらたまらない。

 彼女のいない人生なんてありえない。彼女は俺の全てだ。絶対に逃がさない。

「椿、愛してるよ」

「ん?何、急に‥‥どうしたの?」

「椿は?俺のこと、愛してる?」

「やだ、すぐそうやって恥ずかしいこと言わせようとして‥‥ううー‥‥愛してますよ」

 はあああ、椿がかわい過ぎて、しあわせだ。

 (完)
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