先生!見ちゃダメ!




少女漫画でよくある、お互いの家を行ったりきたりとかもない。千晴くんは大学生。生活リズムも違う。

今では回覧板を届けにきてくれた時くらいしか会えない。




「私はただ、また昔みたいにたくさん話せたらいいなって思ってるだけで。…学校がそのきっかけになったら、ってくらい、なのに。…千晴くんが人気者すぎて、きっかけ作りすらできない」

「まあ、あの顔と性格じゃーね」




当たり前だよねーと相槌を打つ彼女。私の傷は抉られた。…少しくらい慰めてくれたりしないのか。千晴くんがカッコいいのはそうなんだけども。



わかってる。昔仲が良かったからって、今も好意的でいてくれているとは限らない。それは百も承知。

でもやっぱり、恋する乙女は少しくらい夢を見たい生き物でもあるわけで。




「欲張りなのかな…」

「そんなことないと思うけど。仲良かった人とまた仲良くなりたいってことでしょ?恋愛感情抜きにしても、別に変じゃないよ」

「え、優しい…」

「私はいつも優しいよ」




急にかけられた優しい言葉に驚きを漏らすと、一ミリも納得できない答えが返ってきたけど、視線でだけ抗議した。




< 5 / 12 >

この作品をシェア

pagetop