辺境伯様と白い結婚~敵国の王女のはずが旦那様の甘やかしが止まりません~
 「大丈夫よ、エリーナ。私がこの世からいなくなったところで誰も悲しみはしないわ。むしろ喜ぶのではないかしら」

 「何をおっしゃいます!私は嫌ですよ、姫様がそのような目に遭うなんて……あなた様が幼い頃よりお仕えしてきたのです。嫁ぐ際も必ずくっ付いていきますからね!」

 
 エリーナは鼻息を荒くして意気込んでいる。彼女は私に長年仕えてくれている侍女で、私が物心ついた時にはすでに仕えてくれていた。年齢は私より一回りくらい上で27歳だったはず…………私にとっては侍女というより、お姉さんのような存在。

 
 前髪は短くて、薄いブラウンの髪を後ろで結い上げている。

 
 私達はリンデンバーグ国境付近の国を見渡せる、デールの丘に来ていた。

 
 お城の中は息が詰まる…………私はいつも城から出してもらえない。少しでも出ようものならお父様から様々な刑が待っていた。幼い頃は北側の塔にお母様と幽閉状態で、お母様が亡くなる寸前からお城の一室に移ったものの……今でもお城の中以外は自由に出る事は出来ない。

 
 それでも10歳を過ぎてから、脱出の技術も磨きがかかって、こうやって出歩いてしまっている…………お母様が亡くなってから特にお父様の目も緩くなった気がするわ。


 
 ここの丘からは広い世界が見渡せるから、つい息抜きも兼ねて来てしまう。

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