制服レモネード
大きく深呼吸をして顔を上げると、先にはグレーのタキシードを着ている龍ヶ崎くんが見えた。

龍ヶ崎くんは私に目線を合わせると、突然、眉間にしわを寄せて口をへの字に歪める。

一体どうしたんだろうと首を傾げると、顔を元通りさせた龍ヶ崎くんがこちらを指差した。

そして、「あ・ず・は・の・か・お」と口パクで確かにそういった。

えっと……これは……。

私の顔がそんな怖い顔をしていたって解釈でいいのかな……。

別にそこまで怖い顔してたつもりないし、大げさだよ、龍ヶ崎くん。

自然と笑みがこぼれた。

「はい、3秒前──2、」

少し笑えたのは龍ヶ崎くんのおかげだから。

「あ・り・が・と・う」

口パクで彼にそう返してから、

「1、Go!」

その合図とともに私たちは舞台を歩き出した。

舞台を歩き出すと、結婚式定番のBGMが流れ出し、「キャー」という黄色い歓声。

今日のこの1日で龍ヶ崎くんのファンもかなり増えただろう。

ブーケを持って舞台中央に向かい龍ヶ崎くんと並んでから、ランウェイの先ヘとともに歩く。

客席に手を振ったり、最初はすごく緊張していたけど、今はそんなこと全然無くて。
最後の衣装を着ている今、少し寂しい気もする。

ランウェイの先について、リハーサル通り、龍ヶ崎くんと向かい合うと─────。
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