制服レモネード
「矢吹さんっ……」

夏穂さんとふたりきりになってしまう状況に、思わず彼の名前を呼ぶ。

1人じゃ不安だ。

結衣は、ふたりきりで話したほうが、なんて言っていたけれど……。

「すぐ帰ってくるから。夏穂、梓葉に変なこというなよ」

矢吹さんは、振り向いて私に笑顔を見せると、すぐに玄関の方に向き直ってリビングを後にした。

「いってらっしゃ〜い」

夏穂さんの声がした後に、バタンと玄関の閉まる音が部屋に響いた。

「さっ、今のうちに材料切っちゃおう。梓葉ちゃん、ちょっと手伝ってもらってもいい?」

「あっ、は、はいっ」

本当はお願いされる前に「お手伝いしましょうか?」なんて声をかけた方がいいに決まってることはわかっていたけれど、

今のテンションじゃ、どうもそんなことを言える気分じゃなかった。

そしたら、向こうからそう声をかけられる羽目になるなんて。

「梓葉ちゃん、白菜切ってくれるかな」

言われるがまま、隣に立って、包丁を握る。

料理は普段お家でしているからなんてことないことなのに、し矢吹さんのことを狙ってるかもしれない夏穂さんの横でなんて。

緊張して、手が震えそうになる。

ううん。ここは、料理だけに意識を集中させて……。
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