制服レモネード
「そういえば、矢吹さん、私との将来を考えてるって言ってたけど、あれってどういう……」

「え……聞こえてたの」

「当たり前じゃないですか」

「そのまんまの意味だよ。梓葉と、ずっと一緒にいたいって。それだけ。だから、そのために全力を尽くすって」

矢吹さんの口からスラスラと出てくるセリフだけれど、それって、何を言っているのか、どういう意味なのか、わかってるつもりなのだろうか。

「本当はもっとカッコよくやるはずだったのにさ……お父さんに認めて欲しさにちょっと慌てたよね」

矢吹さんはそう言いながら立ち上がって、この間見せてくれたCDが入った引き出しの隣を開けた。

「じゃーーーん」

取り出した黒色の箱を、まるで無邪気な少年のようにニッと歯を見せながらこちらに持って来る矢吹さん。

「え……」

「これはなんていうか、梓葉が卒業するまでの……プロポーズのプロポーズっていうか……」

「そんなの聞いたこと……」

驚きであまり言葉が出てこない私をよそに、矢吹さんが、パカっと箱を開けた。

「……学生だし、指輪のままだとなにかと面倒かなと思って、一応ネックレスにしてもらったんだけど」

そう言って矢吹さんが箱から取り出したのは、ピンクゴールドのネックレスに同じ色のリングが1つ付いているもの。

「これって……」

「受け取ってくれる?」

じっとこちらを見て、私の顔を伺う矢吹さん。

「いいの……ですか、こんな、素敵なもの」

「なにいってんの。タイミング来たらもっとちゃんとしたもの送るから。実は、仕事が忙しいってなかなか会えなかった時、何度もお店いって悩んでたっていうのもあるんだよね。ほんと色々と黙ってて心配かけてごめん」

だんだんと実感が湧いて来る。
矢吹さんは本当に、私とのこれからを考えてくれているんだって。
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