制服レモネード
「あり……がとう、ございますっ」

「泣くなよ〜。ほら後ろ向いて。つけるから」

もう気持ちがいっぱいでどんどんと涙が溢れていく。
言われた通り、矢吹さんに背中を向けることしかできない。

「うん、やっぱりよく似合ってる」

首元にひんやりとネックレスがつけられると、彼の優しい声がそういう。

もし、矢吹さんと同い年だったら、もし、あと3年くらい早く生まれていたら。

そんな考えがよぎることもあったけれど、今ならはっきり言える。

今の私が、今の矢吹さんと一緒にいられて、この先の話しが出来ることが、なによりも、幸せなんだ。

「あともう1つ……お願いがるんだけどいいかな?」

「お願い?」

もらったばかりのネックレスに触れていた手を下ろして聞き返すと、矢吹さんが私の隣に座り直す。

「うん。梓葉に、俺の両親にあって欲しいんだ」

「え……矢吹さんの、ご両親?!」

「この機会に、会いに行こうかなと思って」

この機会……。
矢吹さんのご両親って。

頭の中が真っ白になってしまう。

だって、こんな小娘が、会いに行っても大丈夫なのか。
そりゃ、将来を考えていたらいずれそうなるかもしれないけれど。

まだ私は学生の分際なわけで……。

「いや?」

控えめな矢吹さんの声に、慌てて首をブンブンと振る。


「いやなわけないです!ただ、このタイミングでいいのかなって」


「このタイミングだから会って欲しいんだ。俺のことも梓葉に知って欲しい」


「矢吹さんのこと……」


ドクンと心臓が脈打つ。
今まで聞いてこなかった矢吹さんの過去を。
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