【Amazonベストセラー入りしました】偽花嫁として嫁ぎました。バレたら処刑されるとハラハラしていたらイケメン王が溺愛してくるんですが?

11

「案内⋯⋯、ですか?」
 フウルはびっくりして聞き返した。
「ああ、そうだ。馬車で出かけようと思っているが——、嫌か?」
「いいえ、もちろん嫌ではないです」
 慌てて首を横に振る。
 だけど心の中は、「わたくしの処刑はいつだろう⋯⋯」と不安でいっぱいだった。
 ——これもやっぱり処刑前のお心遣いなのかな? 陛下はものすごくお優しい方なんだ⋯⋯。
 城の外へ出ると、豪華な白い六頭建ての立派な馬車が待っていた。
「さあ、出かけよう」
「はい⋯⋯」
 リオ・ナバ王はフウルの隣に座った。肩と肩が触れあうほどの近さに座ると、男らしくて清々しい香りがフウルの鼻をくすぐった。しっとりとした空気が漂う深い森の中——そんな雰囲気の香りだ⋯⋯。思わず大きく深呼吸をしたくなる。
 ——あら? どうしたのかしら? 首が熱くなってきたわ⋯⋯。
 オメガが性的に興奮すると首からフェロモンが出る。フェロモンが出る時は首が熱を持ったように熱くなることは、フウルも知っていた。
 ——もしかして、わたくし、発情してる?
 そんなことになったら大変だった。とても恥ずかしいし、きっとはしたないオメガだとリオ・ナバ王に思われてしまう!
 ——オメガ襟をしっかりと巻かなきゃ! 
 慌ててオメガ襟をギュッと強く閉じた。結婚するまでは発情しないで、首元をしっかりと隠すのが、未婚のオメガのたしなみなのだ。
< 32 / 45 >

この作品をシェア

pagetop