【書籍化決定】悪役令嬢に転生した母は子育て改革をいたします~結婚はうんざりなので王太子殿下は聖女様に差し上げますね~

遅れて来た婚約者




 私はその声を聞いて、違う意味で息が止まるかと思った。こんな場所にいるはずがない。幽霊でも見ているかのような目で殿下を見つめていると、殿下から少し笑みがこぼれる。


 
 「……そんなに見るな」


 え…………照れている?危機的な状況にも関わらず、殿下の反応に半分引き気味の顔をしてしまった。

 
 「……おい、随分物騒な物を持っているじゃないか…………身分の高そうな男だな」

 
 私を押さえつけている男はわざと悪びれるような態度を取っているのか、殿下に軽口を叩き始めた。ダメよ、かりにも王太子殿下にそんな口をきいてしまったら、処刑どころの騒ぎではなくなってしまう。

 とても物騒な想像をしていると、殿下は自身の剣に力を込め、かなりの負のオーラを出しながら脅し始めた。

 
 「そのような軽口を今すぐ叩けなくする事は容易いが……私の婚約者が血で汚れてしまうのは忍びない。まずは彼女から離れるまで待ってやろう。さっさと汚い手を私のオリビアから離せ」
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