【書籍化決定】悪役令嬢に転生した母は子育て改革をいたします~結婚はうんざりなので王太子殿下は聖女様に差し上げますね~

逡巡する夜


 私から妙な圧を感じ取った殿下は、一つ咳払いをして話始める。


 「……ゴホンッ…………そうだな、オリビアの言う通りだ。教会は聖職者の集まりだが、上にいけばいくほど権力にしがみつき、金の亡者と化す者も増える。下の者は純粋に神に仕えているだけの者がほとんどだとは思うが…………ここの司祭も最初は敬虔な聖職者だったと思うけどね。おおかた出世の話をされてヴェットーリ司教に買収されてしまったんだろう……権力に飛びつく者の典型だと言うべきか……」

 「………………」


 王太子としての立場上、そういった人たちを沢山見てきたのだろうなと思うと、ちょっぴり殿下の横顔が寂しくも見える。権力を前にして己の信念を貫ける人がどれだけいるか……立場が弱い者は従わざるを得ない場合も多い。
 
 だからこそ貴族や王族は正しい道を選んでいかなければ、そのあおりを受けるのは下の者なんだわ。


 「……そうですわね。その権力のあおりを受ける弱き者が住みやすい世界にしなければ。もし無事にこの件が解決したら、貧しい子供たちを修道院で面倒を見る事は出来ないかと考えていますの……」

 「修道院で?」
 「……はい。子供たちが人身売買で連れて行かれる心配がなくとも、彼らには住む場所はなく不衛生で、満足に食べ物も食べられない状況は変わりません。公衆浴場は入れるようになりますが、私は根本的な解決をしたいと思っていて…………」
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