【書籍化決定】悪役令嬢に転生した母は子育て改革をいたします~結婚はうんざりなので王太子殿下は聖女様に差し上げますね~

 『申し訳ございません!』


 ”元”ではあるが、ヤコブ司祭とヴェットーリ司教は聖ジェノヴァ教会の地下の一室で聖職者達に囲まれ、激しく詰問される中、土下座をしていた。

 「民からの税収が見込めなくなり、人身売買についても厳しく監視されてしまっている。我々聖ジェノヴァ教会が生き残れるかの瀬戸際だ…………由々しき事態となった。おのれアレクシオス国王め……」


 一人の司教が憎々しげに口を開いているところに、美しい青年のような聖職者がやってきた。


 「皆の者、落ち着くがよい。神はまだ我らをお見捨てにはなられておられないようだ…………」

 「大司教様!」


 その聖職者はフェオドラード大司教その人。皆がひれ伏し、跪いて首を垂れる。


 「喜べ、もう少しで聖女様にお目にかかれる事になるだろう」

 「…………それでは………………」


 フェオドラードは天を仰ぎ、まだ見ぬ聖女へと思いを馳せる。


 「…………ようやくだ、ようやく完成しようとしている。笑っていられるのも今の内よ、アレクシオス」


 「おぉぉ…………」という歓声が地下の一室に響き渡る…………そんな空気を微塵も感じさせず、粛々と建国祭の準備は進み、開幕しようとしていた。


 
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