【書籍化決定】悪役令嬢に転生した母は子育て改革をいたします~結婚はうんざりなので王太子殿下は聖女様に差し上げますね~

 眼鏡をスッと中指で上げながらブランカ嬢を窘めるのは、深いグリーンの髪を真ん中から分け、理知的な雰囲気を漂わせる侯爵令息トマス・リッシモンド。彼も書記だ。いつも書類と戦っている中、オリビアがいる事で私の仕事が遅れるので、当然オリビアの事は邪魔に思っているだろう。


 
 「…………あぁ…………それが……」

 
 ∞∞∞∞

 
 「領地へ療養に行く?」


 二人が声を揃えて復唱した。オリビアが私の元を離れるという事と、そんなに状態が悪いのかという事、両方で驚いているのだろうな。皆が思っている事が手に取るように分かる…………それくらいオリビアが私から離れるという事が有り得ない事実だからだ。
 私としても衝撃に打ちひしがれているというのに………………だがそんな私の気持ちなど彼らは知る由もなく、オリビアについて思っている事をつらつらと話し始めた。

 
 「ではしばらくは仕事が捗りますね」

 滅多に表情に出ないトマスが、ほんの少し笑みを浮かべている……
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