【書籍化決定】悪役令嬢に転生した母は子育て改革をいたします~結婚はうんざりなので王太子殿下は聖女様に差し上げますね~

美しき狂信者


 
 聖職者が着るダルマティカをゆったりと着て、金糸や銀糸を使った織り柄が入れられている高級なストラを首から下げているので、一目で高位聖職者なのだと分かる。

 
 明らかに今まで出会った聖職者とは違う雰囲気…………この人が大司教ってわけね。


 もっとお爺さんっぽい人かと思ったけど、こんな美しい人が人身売買やこの毒薬を使って国をひっくり返そうとしていたなんて、証拠がなければ誰もが信じないでしょう。

 私は教会がしていた事を目の当たりにしてきたから、絶対許さないけれど。


 「………………あなたが大司教なのね……子供たちを売り払っていたボスってわけ」

 「売り払うだなどと、そのような粗暴な言葉を使われるとは心外ですね。私は子供に未来の選択肢を与えてあげただけ……この国にいても未来などない子供ばかりだった。慈善活動の一環でしたのに」

 「彼らの意思は?勝手に未来などないって決めつけて、他国に売りさばいていたのを正当化するつもり?」

 「またそのような罵詈雑言を……あなたはどうしても我々を敵だと思いたいようですね。まぁ、いいでしょう。我々が求める世界にあなたは必要ありませんから……」


 私にそう告げて、氷のような笑みを浮かべるその顔に寒気が走る。聖職者なのにこんなに簡単に人を消そうと出来るものなの?


 「…………必要ないのは私たちではなく、あなた達ではないか、大司教。あなた方は必ず陛下の御前に連れて行く!」


 イザベルが大司教に向かって叫ぶと、彼はとても愉快と言わんばかりに笑い出した。
< 489 / 512 >

この作品をシェア

pagetop