【書籍化&コミカライズ決定】悪役令嬢に転生した母は子育て改革をいたします~結婚はうんざりなので王太子殿下は聖女様に差し上げますね~

 
 クラレンス公爵領は海と川に囲まれている。私たちがお世話になるマナーハウスは丘の上に立っていて、後ろは崖のように岩肌が見え、下に広がる海からは波が打ち寄せている。前方には領地が広がり、領地を囲むように流れる川の向こうには広大な森が鬱蒼と生い茂り、マナーハウスからはその全てが見渡せる。

 川からは新鮮な魚介類が取れるし、川から水を引く事によって農業も盛んに行われている。川の向こうには森が広がっているので、森の資源を扱う炭焼き職人や製鉄職人なども領地には暮らしているようだ。
 これだけ栄えているなんて……お父様の手腕は素晴らしいわね!そのお父様の手腕をもってしても貧困はなくならないのかしら……こんなに活気があって豊かに見える領地でも裏では苦しんでいる人々がいるというのは胸が痛むわ…………

 
 馬車で進みながら活気のある領地を見渡し、自分に出来る事は、と考える。

 
 「お嬢様、あそこの丘の上に見えるのが我が公爵領主の屋敷でございますよ!」

 
 丘の上には周りを塀で囲まれた立派な屋敷がそびえ立っていた。これがマナーハウス…………王都の屋敷も素晴らしいものだったけど、領地の方も凄いわね。こんな素晴らしい屋敷が領主不在だなんて、勿体ない!
 ずっとここに住んでいてもいいかしら…………でもそうなったらお父様が泣くわね。お父様なら隠居してきそうな感じもするけれど。
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