青春は、数学に染まる。 - Second -


買い物を終え、有紗はそのまま空手道場に行くということで、その場で解散した。



時刻はもうすぐ19時になるところ。


先生、暇かな。






忙しかったらどうしようとか色々考えたけれど。


…私、彼女だし。


電話するくらい、大丈夫よね。






そう考え、思い切って電話を掛けた。
すると、ワンコールも鳴らないうちに電話は繋がった。



「え、はやっ!」
『こんばんは。早くてすみません』
「いや、良いんですけどね。全然」
『実は僕も電話を掛けようか悩んで、スマホの画面と睨めっこをしていたところです』
「あ、誰かに掛ける予定でしたか。すみません、先そちらどうぞ」
『…………貴女にですよ。真帆さん』

電話越しに小さな溜息が聞こえてきて、その後先生はふふっと笑った。

『以心伝心です』
「そういうことにしておきましょう」
『物は言いようですからね』
「はい」


面白くてにやけが止まらない。

先生の声を聞くだけでも気持ちが昂る。


『ところで、ご用件は何でしょうか』
「…その…もし暇なら、今から会えないかと思いまして」

そう答えると、先生は黙り込んだ。

…何か、考えている?

「あ、いや…。暇ならです。無理にとは言いません」

弁解すると、先生は吹き出すように笑った。

『いいえ、全然無理ではありません。ただ、真帆さんからお誘いがかかるのは初めてなので。びっくりしてしまいました』

…そうだっけ?
初めて?

いつも先生からのお誘いだったか…。


『実は僕も同じ用件でした。決まりです、お会いしましょう。今、どちらですか?』
「先生の家の近くのショッピングセンターです」
『かなり近いですね』
「はい。歩いてそちらに行っても良いですか?」
『良いですよ。では、お待ちしております』



先生の優しい声に心が弾んだ。

電話を切り、ここから徒歩5分も掛からないくらいの距離を歩いて移動した。







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