陰陽現代事情
 ドッ!チャカ!ドッ!チャカ!
「ニッポンのガッコはキーソクーが厳しーすーぎーる!!」
 ポコ!ポン!ポコ!ポン!
「セートはセンセにジュージュンだ!!」
 小学校のグラウンドで左上位が騒ぎ立てている。その様子を教室の窓越しに、怪訝そうな表情で眺める一人の少年がいた。
(父さん・・・・。また来やがった・・・・!!)
 少年は、目を強くつぶり、頭を抱えた。
 この少年こそ、左上位の息子、安倍晴明である。
(クラスのヤツも父さんのこと、みんな知ってるんだぜ!頼むから・・・・その格好で、学校に来るのだけは、やめてくれ!!)
 そのうちこのチンドン屋は校舎に侵入し、廊下を歩きながら騒ぎ立てだした。教室では授業が続けられていたが、左上位のバカ騒ぎのせいで、先生の声がかき消されるほどだった。先生も授業を続ける気が失せ、余談に入った。
「安倍くんのお父さんは、また来ましたねー!」
 その時注がれる、クラスのみんなの冷たい視線が、晴明の胸に冷たく突き刺さった。
 ドン!ドカ!ドン!
「キソクなんか、無くなっちめー!!ついでにガッコも、無くなっちめー!!」
 左上位が、晴明のクラスの前の廊下を通過していった。
 先生はこう続けた。
「安倍くんのお父さんの仕事は一体何なんですか?会社も無くなっちめーって叫ぶことなんですか?会社も行かずに、あんなバカ騒ぎをしているんですか?」
 クラスの中には笑い声がちらほらと上がった。
(くっ・・・・くそっ・・・・)
 晴明はうつむき、肩をいからせて机の下で拳を握った。
< 20 / 44 >

この作品をシェア

pagetop