陰陽現代事情

第11話 恥辱

 晴明の小学校で運動会が行われていた。
 徒競走や綱引き、玉入れなどが行われ、その順位を競い合っていた。
「おい晴明!晴明!あいつの足を早くして、一着で着くようにしてくれ!」
 徒競走を見学しているクラスメートが、走っている様子を指さして、興奮した様子で晴明に頼んだ。
「それはできない。やれば反則になる」
 晴明は冷静な表情でつぶやいた。
「なんだぁお前、つまんないな。やってくれてもいいのに」
 調子に乗らない晴明に、クラスメートは興ざめしていた。

 来賓席では、子どもたちの競技を見ながら、学校の現状を憂う会話が聞かれた。
「最近の運動会って、何だか迫力がないと思わないか?」
「確かに。これといった見ものがなくなってしまった」
「かつては騎馬戦や組み立て体操というのもあったのだが、もう姿も形もないね」
「騎馬戦にしても、相手を押し倒すものから、いつからか帽子を取るだけのものになって、そしてついに廃止された・・・・」
「左上位とかいう奴らだったよな。あいつらによって、強引にやめさせられたんだよ」
「覚えてるか?あの年のこと。奴らが乱入してきて、運動会がメチャクチャになったことを」
   ・・・・
(ドン!チャカ!ドン!チャカ!
“キーバセーンやーめろ!!クミタテタイソーやーめろ!!”
“危ない!キケン!野蛮!残酷!”
“コッセツしたらーどうするんだー!!死んじゃったらーどうするんだー!!”
 チャン!ドカ!チャン!ドカ!・・・・)
   ・・・・
「危ないの一言で何でもやめさせて、子供たちが体験せずに育っていくのも悲しいね」
「やつらのせいで、学校そのものが骨抜きになっていきそうな気がするよ」
「しょっちゅう学校に来ては、騒ぎ立てているそうじゃないか。授業もまともにできないんだって?」
「まったく、学校もうまく対応できないものかなー」
「噂をすれば何とやらで、もうすぐ左上位の奴ら、出てくるぞ!」
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