陰陽現代事情

第2話 出没!チンドン屋

1989年 東京。

 当時の日本は好景気のまっただ中にあり、バブル経済と言われた。円高により海外旅行に行く人も多くなり、国際交流も盛んになっていた。マスコミでは国際化が叫ばれ、世界に対して目を向ける機運が高まっていた。

 この頃から”変な奴ら”が、至るところに出没するようになった。

 東京下町にある商店街。昭和40年代に繁栄したこの地域も、今はすっかりさびれ、ひっそりとしている。この商店街の閉鎖された店舗のひとつに、いつからか住み着いた、薄汚い三人組がいた。
 男が新聞や雑誌、文献などを広げて、かたっぱしから目を通している。
「”日本の警察は世界一だ”・・・・”日本の教育は世界一だ”・・・・なんだァこいつ!”日本人は画一的だ”ということを自慢にしてやがる。何考えてるんだ!」
 それらには日本や日本人を賞賛する記事が氾濫していた。男はそれらの記事を、不快そうに読み続けていた。
「リーダー!こっちにはこんなことが書いてあります。”日本人は世界一優れた民族”だって・・・・」
「けっ!!」
 男は吐き捨てるように叫んだ。
「うぬぬぬ・・・・ニッポンジンの奴ら・・・・図に乗りやがって・・・・!!」
 男は拳を固め、怒り狂った。

*   *   *

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