婚前どころか、フリですが ~年下御曹司?と秘密の溺甘同居~
彼はきっと私とは住む世界が違う人だ。どこの名門かは知らないけど、とにかく私が手出ししちゃいけないのは間違いないから! まぁ…今のところ手出しされてるのは私なんだけど…。だからこそ、私は翔くんとの同居が解消されるその時まで、彼には靡かないし気持ちも持っていかれない!今ここで誓う!

翔くんを部屋の真ん中のカーペットに座らせ、意気込みも込めてテキパキと掃除も終わらせる。
彼がインスタントのコーヒーを一杯飲み終わる頃には完璧だ。
遠隔でのカーテンの開閉も問題ないし、しばらくは

「ごちそうさまでした。 美味しかったです」
「ありがとう。そこ置いといて」

ただのインスタントなのに、感想付きでカップを下げてくれた翔くんは、すっとキッチンに立とうとする。

「俺やります」
「いいからいいから。 翔くんは向こうに座ってて!」
「…分かりました」

いいから、今は彼と至近距離で並ぶのはよくない。
今日の翔くんはパーカーに細身のパンツという春らしいシンプルな格好なのに、有り得ないくらいキマってしまっているから。3月の暖かい日だから私も厚着はしていないけど、この人の近くにいたら熱くなってくる。
それを悟られないように、せめて密室に二人きりの今は、十分な距離の確保をするべきなのだ。
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