婚前どころか、フリですが ~年下御曹司?と秘密の溺甘同居~
「目的? そんなもの、腐った奴らに制裁を与えることに決まってるだろ」

制裁…パーティーの参加者はベリが丘に関わるアッパー層がほとんどだ。そういう人たちは職業柄恨みを買いやすく、だからこそ警戒態勢を敷いていたはずなのに。ツインタワー屈指の警備の目を掻い潜り侵入するのは容易ではなかったはず。もしかしたら、犯人はひとりではないのかも。もしくは参加者の中に紛れているとか……って、推理してる場合じゃないんだよね。

「ごちゃごちゃ言ってねえで来い! 女、お前もだ」

男性の腕を掴んでいるのとは反対の手で私を思い切り引っ張りあげる。男の力は強くて、とても抗えるものではなかった。ポケットのスマホはすでに振動していない。翔くんは気づいてくれただろうか。

「あなた! お嬢さん!」

ご婦人が悲痛な叫び声を上げた。その瞬間、男の背後から、ぬっと静かに伸び迫る腕。あっという間に制圧された男は地面で喚き散らし、私と老夫婦は解放された。

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