婚前どころか、フリですが ~年下御曹司?と秘密の溺甘同居~
「至らない点もありますが、小春さんがずっと笑顔でいられるように尽くします」

そんな真摯な告白、聞いて平常でいられるわけない。鼓動が早すぎて聞こえてしまうんじゃないかってくらい騒がしい。これは彼の本心だと思うには、自惚れだろうか。

「姉ちゃんのこと泣かせたら一生許しません」
「はい。肝に銘じます」

遥太は仏頂面を崩さないけれど、眉間のしわはなくなっていた。翔くんのおかげで、遥太も納得してくれたみたい。1つ問題があるとすれば、同居が終わって翔くんとの関係も今のようにはいかなくなった時。遥太とまた一悶着は避けられないだろう。

その後は普通に…とは言い難いもののそれなりに良い雰囲気だった。カフェを出て、用事があるという遥太と分かれる。

「俺は小春さんが好きです。 あなたにはいつも笑っていてほしい。あなたを幸せにするのが俺であればいい」

真剣な面持ちで翔くんは言う。その横顔が夕日に透かされて、美しい芸術みたいに心惹かれた。

「少しはドキッとしました?」
「うん。少しね」
「ぇ…」
「自分で聞いておいて驚くの?」
「小春さん、」
「少しだけだよ。ほんのちょっと」

胸がいっぱいだなんて言えないけれど、翔くんの気持ちはたくさん伝わって、それを全部受け流すには多すぎる。少しずつ積み重なって、それがやがて何になるのかなんて、考えなくても分かっていた。



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